前回の記事(中国語翻訳者に専門分野は必要?必要性の有無を考察!前編【記事1.17】)では、中国語翻訳は仕事量がそこまで多くないことから、専門分野を限定すると、仕事の獲得が難しくなると書きました。
どのような翻訳分野でも対応していく力が、中国語翻訳者には求められているとのことです。
では、専門分野が必要無いのかと問われると、全くそのようなことはありません。
なぜなら、翻訳会社への登録試験であるトライアルにおいて、専門知識が要求される試験が課されるからです。
このトライアルにおける専門性ですが、最も難しかった翻訳会社で、「日商簿記1級の商業簿記・会計学」相当でした。
「中国企業の連結貸借対照表の翻訳」と「企業会計原則の翻訳」から構成されていて、原文の長さはA4用紙で1ページ半でした。
非常に高い専門性が要求される内容です。
翻訳者においては、常に新規得意先を積極的に開拓していくことが必要であると言われています。
そのためには、専門とする分野を確立し、その分野における最新情報を常に入手しておくことが不可欠です。
そうすることによって、トライアルの突破が可能になるからです。
以上から、中国語翻訳においても、専門分野は必要であると結論付けられます。
ちなみに、クラウド翻訳会社を除くと、トライアル合格後に翻訳会社からいくつかの書類が送られていきます。
書類には特異な分野を記載する欄があり、翻訳会社によれば、仕事を発注する際の参考にしているそうです。
この点からも、専門分野の必要性が読み取れます。
【写真1.18】中国の繫華街。前方の煌びやかな店舗と、後方にそびえ立つ高層ビルが夜の街を彩っている(出典:写真ac)。
ところで、Gengo、Conyac、YAQSなど、クラウド翻訳会社のトライアルは、専門性が要求されるものではありませんでした。
そもそも、専門分野別のトライアルが存在せず、全員が同一のトライアルを受けます。
その内容は、市販されている商品の紹介文、ニュース記事、観光情報等、一般常識の範囲内のものです。
確かに、YAQSの商品紹介文は家電製品に関するもので、工業技術に関する知識をあらかじめ勉強してからでないと、翻訳ができないものでした。
しかし、翻訳開始前の勉強で何とかすることができたので、専門性というほど難しいものではなかったと言えます。
クラウド翻訳において、案件の提示は、その会社に登録している翻訳者全員に対してなされます。
翻訳者は提示された案件をみて、早い者勝ちとはなりますが、受注するかどうかを自分で決めます。
通常の翻訳会社のように、個別に案件の発注がなされるわけではありません。
従って、翻訳者の得意不得意を会社側(発注側)で把握していなくとも、翻訳者自身が判断・受注するので、問題が無いということになります。
以上、前回と今回の記事をまとめると、下記のようになります。
中国語翻訳の実務においては、得意な分野に限らず仕事をするのが一般的だが、トライアル突破のために、専門分野が必要である!