2021年度全国通訳案内士試験の最終合格発表日(2022年2月4日)まで、残すところ5日となりました。
無資格者によるガイドが認められた2018年以降、二次試験の合格率は格段に低くなっています。
過去5年間における全言語の合格率は、下記の通りとなっています。
二次試験受験者数 二次試験合格者数
2020年 1004名 489名(二次合格率48.7%)
2019年 1287名 618名(二次合格率48.0%)
2018年 1684名 753名(二次合格率44.7%)
2017年 2616名 1649名(二次合格率63.0%)
2016年 3525名 2404名(二次合格率68.2%)
参考:日本政府観光局
受験者・合格者共に年々減少傾向にあることは分かりますが、何といっても注目してしまうのが、2017年度と2018年度の大きな差異です。
受験者数は1000名以上減少し、かつ、合格率が20%近く低下しています!
では、この期間に何があったのか、業界では次の見解が有力となっています。
①従来は、訪日外国人を有償でガイドするには、通訳案内士の免許が必要となっていた。
②しかし、新通訳案内士法が改正され、資格を持たない者でも、ガイドが可能となったのです。
③背景には、当初2020年に予定されていた東京オリンピックの開催があった。
④当時は新型コロナウイルスが流行する前で、多くの外国人の入国が予想されていた。
⑤その外国人の多くは日本各地を旅行することが考えられ、それは観光立国を掲げる政府にとっては、絶好のチャンスであった。
⑥しかし、問題は彼らをガイドする人材(通訳案内士)が圧倒的に不足していた。
⑦そこで、通訳案内士の資格を持たない者でも観光ガイドが出来るように、法改正を行った。
⑧その結果、通訳案内士は、「業務独占資格」から「名称独占資格」へと変わっていった。
⑨同時に、政府は、無資格のガイドと有資格者を差別化するために、通訳案内士試験の難易度を大幅に引き上げた。
【写真4.17】満開に咲き乱れるソメイヨシノ。お花見は外国人観光客にも非常に人気が高いイベントである(出典:写真ac)。
無資格ガイドとの質の差を明確にするために、試験の難易度が大きく増加しました。
一方で、名称独占資格へと変わったことで、受験者数も著しく減少しました。
このことから、現在全国通訳案内士を目指す受験生は、資格に対して非常に強い思い入れがあると考えられます。
そうでなければ、難易度が高いうえに、独占業務が廃止された試験のために莫大な時間と労力を費やす動機が無いと思えるからです。
よって、今回も今後も、高い意識をもつ受験生らによる激しい戦いが続くと思います。